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トラブルと災害が続発するTFT液晶パネル用ガラス基板生産
via 日経BP Tech On! http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20091023/176756/
2009/10/23 15:00
宇野 匡=DisplaySearch
われわれが10月に発刊した「季刊 LCD用ガラス基板調査レポート」の掲載データに最新市況を織り交ぜて,液晶パネル用ガラス市場展望を語りたい。
米Corning Inc.の台湾・台中工場で10月19日の日曜日に電力障害が発生した。電力供給が遮断されたことにより,いくつかの溶融窯で温度が低下し,ガラスが窯の中で固まってしまった。Corning社は被害の状況について,「現在調査中」(22日時点)と発表している。
ガラスの溶融窯のメンテナンスとしては,温修(hot repair)と冷修(cold repair)がある。温修は窯の熱を維持したままの修理であり,比較的短期間で修理は終了する。冷修は窯の熱を落とした上で,耐火レンガを取り替える必要がある。窯の容量により修理の期間は変化するが,Corning社の1窯当たりの生産能力は他社と比較して小さく,2~3カ月を要する。今回の事故では,冷修が必要と推測される。
同社Vice Chairman and Chief Financial(副会長兼CFO(最高財務責任者))のJames B. Flaws氏は,2009年第4四半期(10~12月)の出荷量見通しを,当初の前期比5%増から横バイもしくは微減に下方修正した。詳細は発表を待たなければならないが,電力供給のバックアップが機能しなかったことについては,原因の解明と対策が求められる。
パネル・メーカーへの影響は?
冒頭のレポートによると,TFT液晶パネル用ガラス基板は2009年弟2四半期以降の急激なパネル市況の回復に対して,不足あるいは逼迫(ひっぱく)した状況が続いてきた。懸念されるのは,パネル・メーカーへの影響である。しかし,第4四半期は,クリスマス商戦向けの生産が終了する季節変動により,パネル需要が前四半期比で11%の供給過剰へと緩和するとわれわれは予測している。このパネル需給緩和の傾向の中で,業界全体では,今回の事故の影響も解消されると考えている。
ただ,短期的には,Corning社の台中工場が直接供給していたパネル・メーカーへの供給のバックアップは,同社1社では困難と考えられる。従って,旭硝子や日本電気硝子との交渉が必要となるため,混乱が予測される。また,パネル・メーカーが必要以上にガラス基板を発注する可能性が高く,パネル・メーカーのパワー・バランスにより,必要量を確保できないパネル・メーカーが出てくる可能性はある。
われわれは,今回の事故によるガラス基板全体の需給シミュレーションを実施した。結果として2009年第4四半期の需給は,事故がなかった仮定の8.6%から5.4%の“バランス傾向”となった。米DisplaySearch社では5~10%の供給過剰を「均衡(バランス)」と定義している。今回のCorning社の事故による全体需給への影響は約3%となっている(図1)。
8月には,駿河湾を震源とする地震の影響により,静岡工場の溶融窯4窯が影響を受けた。8月の地震直後は,需要が非常に強い状況にあったため,パネル・メーカーへの供給不安が懸念されたが,ガラス・メーカー各社の努力により影響は最小限にとどめられた。今回の事故は,8月の地震より影響が大きくなると考えられる。しかし,前述の通りパネル需要が緩和傾向にあり,全体では影響は軽微であると考えられる。

図1 ガラス基板の需給シミュレーション
出典:ディスプレイサーチ「季刊 LCD用ガラス基板調査レポート」に一部追記
(画像のクリックで拡大)
新規参入は非常に困難なガラス基板だが…
2009年を通して,供給が不足あるいは逼迫した状況が継続してきたため,TFT液晶パネル用ガラス基板は部材の中では最も注目を集め続けている。8月の地震と今回の事故により,さらにガラス基板は注目の的になると考えられる。
供給不足と連続の事故は,ガラス基板メーカーにとっては,長期的には懸念する必要があるだろう。パネル・メーカーがガラス基板の安定確保のために,ガラス基板の垂直統合を模索する可能性が高まっているからだ。実際,韓国LG Display Co., Ltd.は,韓国LG Chem Ltd.でのTFT液晶パネル用ガラス基板の投資を正式に発表している。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.はCorningとの合弁会社Samsung Corning Precision Glass Co., Ltd.(SCP)により,ガラスの供給不安からは最も遠いパネル・メーカーとなっている。
ガラス基板は,その製造技術の難しさや投資金額の大きさから,新規参入は非常に困難である。しかし,供給不安はパネル・メーカーによるガラス基板の垂直統合に大義名分を与える結果となるため,今後のガラス・メーカー各社の対応は非常に重要であると考えている。